一昨日参加した「不動産有効活用のセミナー」では、先週受講した「不動産相続セミナー」に引き続き、
不動産に関する法律家として日本を代表する弁護士である吉田修平 先生の講義を受講することができました。
先生のセミナーを受講するのはこれで3回目で、丸一日の長丁場でしたが、聞き漏らしたくないお話ばかりで、あっという間に一日が終わってしまいました。
今回も実務で役に立つヒントが満載で大変勉強になりました。
何よりも先生のセミナーが素晴らしいのは、何層にも重なっている法律の条文やその解釈、そしてその背景を、基礎から立体的かつ時系列で教えてくださることです。
我々のように、法律の専門家ではない不動産の実務家にとっては、法律の仕組みや成り立ちを順序立てて勉強することは中々できないものですが、
先生のお話によって、法律やそれらの条文の趣旨というか、目的が明確に理解できるようになり、知識が身になり実務に反映しやすく感じました。
この法律の建て付けについての詳細は、先日の記事に書きましたのでよろしければそちらをご覧ください。
さて、一昨日のセミナーでは、次のようなことについて学びました。
- 賃貸借について(賃貸借契約の意義、賃貸借の成立と存続期間、賃貸借の効力、賃貸借の終了)
- 借地についての特則(借地権の成立、地代の支払いの有無、地代増減額請求権について、使用・収益方法について、借地権の譲渡・転貸について、定期借地権について)
- 借家についての特則(借家権の成立、建物についての賃貸借、シェアオフィス・シェアハウス等について、修繕について、賃借権の譲渡・転貸について、借家契約の期間について、原状回復について、高齢の借家人が孤独死した場合の問題)
とにかく盛り沢山で、今回も先生に付いていくのが精一杯でしたが、講義を聴きながら新たな気づきが沢山ありました。
その中でも特に、定期借地権による優良な住宅地の管理についての話が、個人的にはとても感銘を受けました。
私のこれまでの実務経験では、不動産の有効活用という側面においては、
空きビルの有効活用としてシェアオフィスをプロデュースしたり、定期借家権の活用など、どちらかと言うと「建物」の有効活用に積極的に関わってきました。
そのため、今回のセミナーでも申込時点では、空き店舗や空きビル、空き家の有効活用の更なるヒントやノウハウを得る目的で参加しました。
しかし、それらについても多くのヒントや学びを得ることができたのですが、それ以外に、土地の有効活用について、特に借地における定期借地権の活用方法について、そのノウハウというか、その利用のメリットというか、考え方について、とても大きなヒントを得ることができました。
さて、定期借地権の活用法の話の前に、定期借家権について少しお伝えします。
先にもお伝えした通り、私はこれまでの仕事において定期借家権を積極的に活用してきましたが、
「定期借家契約」ができた当初は、更新のできる従前の「普通借家契約」と比べて借主保護の面で、借主からあまり人気ありませんでした。
そのため、大規模物件や新築物件、または好立地の物件を所有するオーナー以外の一般貸主の中には、依然と旧来からの普通借家契約を使い続けパターンが多かったと思います。
しかし、時間の経過とともに定期借家が一般的になってきたことに対する借主サイドの安心感も醸成されてきたこともあり、事業用物件や一般の新築賃貸住宅などを中心にだいぶ浸透してきたと思います。
それまでは、定期借家に対する理解が得られない時は、借主に対しても貸主に対しても、定期借家権の制定を定めた借地借家法38条の改正法である、
『良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法』
のタイトルそのままの法律制定の趣旨を、定期借家のメリットとしてよく説明させて頂きました。
その最大のメリットを一言で言うと、
「不良借家人と再契約をしなくても良い」
だから、改正法のタイトルのとおり、
「良質な住環境を確保した賃貸物件を供給できる」
というもので、借主、貸主双方に大きなメリットがあります。
定期借家契約は、「更新がなく、期間の満了とともに借主は建物を明け渡さなくてはならない」ため、
貸主の立場からすると、期間の満了とともに確実に物件を返還してもらえるのと同時に、明け渡し時に立退料などを支払う必要がない、ということで、これまでは、こちらの面が大きくメリットとしてクローズアップされてきました。
特に、築古の建物で、近い将来建て替えを検討している物件などで利用されることも多かったと思います。
逆にこれを借主の立場から考えてみると、期間満了とともに出ていかなくてはいけないため、再契約が保証されているわけではないため、先行きが見通せない状況で、中々借りにくいということで嫌煙されがちだった大きな理由でもありました。
さて、実際の賃貸の現場ではどうかというと、
定期借家契約の期間の満了時に、建替えを検討している物件など以外では、ほとんどのケースでは、これまでの入居期間中、特に問題のない入居者であれば、貸主は再契約を提示していると思います。
貸主だって当然、良い入居者には居続けてもらいたいからです。
契約によっては、予め、滞納や迷惑行為など、貸主が再契約を拒否する内容を定めて、それに該当しない場合は当然再契約をする旨を条文に定めて、当初契約時に借主の不安を取り除いている契約もあります。
つまり、悪い入居者には契約期間満了とともに退去してもらい、逆に良い入居者にはできるだけ長く入居して頂く、
そんなことが、定期借家契約によって可能になったわけです。
つまり、法律の制定の趣旨通り「良好な住環境を確保した賃貸住宅の供給」ということが制度上、やりやすくなったわけです。
これまでの普通借家契約は借主保護の面が強く、不良借家人との契約解除は手続きに時間と労力がかかり、貸主が泣き寝入りをするという状況も多々あったと思います。
そのため、これまでは賃貸管理の面では、いかに良い入居者に入ってもらうかということが最重要課題となり、入居審査がとても大切でした。
しかし、昨今の少子化や人口減少の中で、貸し手市場から借り手市場となり、入口である入居者募集の間口を狭めすぎるわけにもいかないという現実や(しかしもちろん入居審査は大切ですが)、
入居審査だけでは入居者の全ては分からない、入居後にこんはずではなかった、という現実もあるわけです。
そういった意味でも、入居後に何らかの手段を講じる必要性が出てくるのですが、従来の普通借家契約では良好な住環境を確保するという面では限界もありました。
そのため、貸主と借主が対等の関係で、程よい緊張感で、良好な住環境を確保するという共通の利益を追求しやすい定期借家契約という契約形態は、とても良い制度であると思います。
ちなみに、世界では日本の「定期借家契約」は標準の契約形態であり、日本の「普通借家契約」という当然更新される契約形態というのはないそうです。
さて、まとめると、
特に現在のような人口減少、少子化の供給過剰の時代において、不動産賃貸という商売を行う不動産オーナーにとっては、
顧客である入居者を集めるため(テナントリーシング)にも、または一度入居した入居者にできるだけ長く居続けてもらうため(テナントリテンション)にも、
その商品である「住環境」をできるだけ良好に保っておく、
ということが欠かせないということです。
そのためにも、世界標準の不動産の賃貸借携帯である「定期借家契約」は大変有効なツールだということです。
以上、本日は先日参加したセミナーで気付きを得た「定期借地権の活用のメリット」についてお伝えしようと記事を書いていましたが、途中から、賃貸建物の有効な活用法である「定期借家権」について書いてしまいました。
だいぶ長くなりましたので、「定期借地権の活用のメリット」については後日お伝えしたいと思います。