本日は、先日の投稿の続きで、先週受講した「不動産有効活用のセミナー」で気付きを得て感動したことをお伝えします。
さて、これまで主に住宅用地として定期借地権を活用するメリットとしては、
例えば、地主側からすると、
- 借地権の期間が限定され、期間満了とともに確実に土地が戻ってきて完全所有権になるとともに、その際に立退料も一切不要。
- 土地の保有コスト(固定資産税・都市計画税)が軽減できる上に、ローリスクで安定した毎月の地代や一時金(権利金または保証金など)が得られる。
- 相続税評価の軽減。
- 初期投資および建物の維持管理が不要。
- 土地活用として、賃貸アパートやマンション、貸駐車場では空室リスクのある立地でも、マイホームの取得層など新たな重要を取り込める。
- 元々未整備の土地が、借地契約終了時にはインフラが整備された宅地として返還される。
などがあり、
一方、借地人側からすると、
- 高額の土地代金を支払って土地の所有権を購入する必要がない。
- かつ高額な権利金も必要がない。
など、土地からマイホームを取得する初期コストが低減され、取得しやすいなどのメリットが言われてきましたよね。
しかし、先日参加したセミナーにおいて吉田先生からは、
定期借地権を活用して「土地の利用方法をルール化」することによって、「土地の価値」を維持・向上させることができる
という、定期借地権を活用するもう一つの大きなメリットを教えて頂きました。
例えば、広大な一団の土地を開発して、高級住宅地として宅地分譲する場合、分譲後には多くの土地所有者が発生することになります。
しかし、所有権を得た一部の土地所有者が、自分の土地だということで、法律や条例の規制範囲内で、
例えば、安い賃貸アパートや、居酒屋など店舗用のテナント物件を建てたり、貸したりしてしまうと、
高級住宅地に相応しくない環境になってしまい、それによって分譲地全体の価値を下げしまう可能性があります。
しかし、このような事態を避けるために、仮に紳士協定を結んだとしても、中々防げるものではありません。
そこで、元々の土地所有者が、土地を分譲するのではなく、
例えば、定期借地権付分譲住宅として、土地所有者が建物所有者と定期借地契約を結び、その契約の中で、建物の用途や種類をはじめとした各種の制約を定め、
仮に、契約に違反すれば(地主と借地人との間の信頼関係が破壊されたと認められる場合)契約を解除することができるようにしておく
したがって、土地利用のルールが守られる、という仕組みです。
確かに、定期借地権付きの住宅では、借地権者はルールがあって不自由に感じることがあるかもしれません。
しかし、土地が所有権の場合は、逆に自由だからこそ周りに変な建物が建ってしまったり、街が汚くなってしまう可能性も高い。
一方、土地利用がルール化された定期借地権付き住宅では、例え10年から15年が経過した後であったとしても経済的に価値が下がらず、転勤になったら売れる可能性も高まるのではないか、とのこと。
これによって借地人である建物所有者が喜ぶのはもちろんだが、何よりも喜ぶのは地主とのこと。
なぜなら、一般的には、地主と借地人とは敵対関係になりやすいが、借地人が本当に喜んでくれることによって、お歳暮まで持参してくれる借地人もいて地主が本当に喜んでいる、というエピソードまで教えて頂きました。
これをお聞きした時、
まるで、建物賃貸借における定期借家契約の立法趣旨と同じような効果が、定期借地権を活用することによって、土地利用においても可能になるのではないかと思い、個人的に大きく感動しました。
ところで、少し前のブログ記事でご紹介した、世界最初の「ガーデンシティ(田園都市)」である英国レッチワースのまちの生みの親であるエベネザー・ハワードらが定めた「田園都市」の定義の中にも、
土地の単一所有による一元管理による土地利用のルール化の重要性、とも読み取れる文章を目にした記憶があります。
ハワードが活躍した時代は今から100年も前であるということと、英国と日本では法制度や文化、生活慣習も大きく異なるということもあり、一概には言えませんが、
住環境やまちづくりという観点では、土地の「所有」と「利用」を分けて適切に管理運用するということは、まちやエリア、ひいては個々の不動産の「価値」を高めることにもつながるのではないか、と改めて思いました。